新築アパート投資では、物件資料に書かれた「表面利回り」だけで判断すると危険です。表面利回りは入口の目安としては便利ですが、実際の手残りは、空室、管理費、固定資産税、火災保険、修繕費、借入条件、諸費用によって大きく変わります。
この記事では、初心者でも判断しやすいように、表面利回り → 実質利回り → 返済後キャッシュフローの順番で、新築アパート投資の利回り計算を整理します。
1. まず見るのは表面利回り
表面利回りは、年間家賃収入を物件取得総額で割った数字です。
表面利回り = 年間満室家賃収入 ÷ 総事業費 × 100
例として、総事業費1億5,000万円、年間満室家賃1,080万円の場合は次の通りです。
1,080万円 ÷ 1億5,000万円 × 100 = 7.2%
この場合、表面利回りは7.2%です。ただし、表面利回りには空室、管理費、税金、修繕費、ローン返済が入っていません。あくまで入口の数字です。
2. 実質利回りはNOIで見る
実質利回りを見るときは、まずNOIを出します。NOIはローン返済前の営業純利益です。
NOI = 年間家賃収入 - 空室損 - 運営経費
実質利回り = NOI ÷ 総事業費 × 100
たとえば年間満室家賃1,080万円、空室と経費を合計20%で見ると、NOIは864万円です。
1,080万円 × 80% = 864万円
総事業費1億5,000万円なら、実質利回りは5.76%です。
864万円 ÷ 1億5,000万円 × 100 = 5.76%
表面利回り7.2%でも、運営実態に近い利回りでは5%台まで下がる可能性があります。
3. 返済後キャッシュフローを見る
投資判断で最も重要なのは、ローン返済後に現金が残るかです。
年間キャッシュフロー = NOI - 年間ローン返済額
NOI864万円、年間返済780万円なら、年間キャッシュフローは84万円です。
864万円 - 780万円 = 84万円
84万円 ÷ 12か月 = 7万円/月
月7万円の手残りだと、少しの空室や修繕で赤字化する可能性があります。そのため、返済後キャッシュフローは必ず感度分析します。
4. 感度分析で赤字ラインを確認する
買付前に、家賃下落・経費増加・金利上昇の3パターンを見ます。
| シナリオ | 家賃収入 | NOI | 年間返済 | 年間CF |
|---|---|---|---|---|
| 標準 | 1,080万円 | 864万円 | 780万円 | +84万円 |
| 家賃5%下落 | 1,026万円 | 821万円 | 780万円 | +41万円 |
| 家賃10%下落 | 972万円 | 778万円 | 780万円 | -2万円 |
| 経費率25% | 1,080万円 | 810万円 | 780万円 | +30万円 |
| 経費率30% | 1,080万円 | 756万円 | 780万円 | -24万円 |
この例では、家賃10%下落または経費率30%で赤字になります。表面利回りが高く見えても、悪化シナリオで耐えられなければ危険です。
5. 買付前チェックリスト
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 総事業費 | 土地・建築費・諸費用・予備費まで含める |
| 家賃 | 周辺相場より高すぎないか確認する |
| 経費率 | 管理費・税金・修繕費・広告費を入れる |
| 融資条件 | 金利・期間・自己資金・手数料を確認する |
| 返済後CF | 月次で手残りがあるか確認する |
| DSCR | NOI ÷ 年間返済で返済安全性を見る |
| 出口価格 | 売却時の利回り・土地値・築浅成約を確認する |
| 法規制 | 道路、用途地域、防火、高度、容積率を確認する |
6. 公的データも使う
エリアの取引価格や地価を見るときは、国土交通省の不動産情報ライブラリが参考になります。不動産取引価格、地価公示、都市計画、防災、周辺施設などを確認できます。中古資産の耐用年数については国税庁のタックスアンサーで考え方が整理されています。
参考情報
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ: https://www.reinfolib.mlit.go.jp/
- 国税庁 タックスアンサー No.5404 中古資産の耐用年数: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm
※本記事は一般的な情報提供であり、特定の投資判断・税務判断・融資承認を保証するものではありません。実際の購入判断では、最新資料、現地確認、専門家確認を行ってください。